Le futur

2年前にネットで知り合った男の子の話をする。

 

Y君とは映画好き、哲学が好きという共通点があり親しくなった。まさか自分が住んでいる駅の3つ先にY君が住んでいるとは思わなかった。

初めて彼と顔を合わせたのは、休日のとある映画館の入り口だった。私はどれがY君なのか全く分からなかったけど、彼は映画館の入り口にひとりでいた女の子を私だとすぐに気付いたらしい。観た映画は新海誠の「君の名は。」だった気がする。Y君はこの映画を観るのは2度目だと言ったけど、隣で食い入るようにスクリーンを観ていた。

 

それから2度目に会ったのは、同じ映画館の上の階にある、映画カフェだった。

そこは映画に関する本がたくさん置いてあり、自由に読んでいい場所で椅子なんかも映画館と同じような快適すぎるもので、時々サラリーマンや学生が来ては居眠りをするほど居心地の良い場所だった。Y君とはそこで珈琲を飲みながら3時間くらい話した。こんなに異性の友人と長い話をしたのは初めてだったから、凄く楽しくて嬉しかった。異性の友人関係は存在しないという人をたまにみるけど、だったら私たちの関係は一体何なんだろうなんて考えた。

 

3度目に彼に会ったのは、その映画館がある駅の近くの居酒屋だった。そういえば、Y君はいつも待ち合わせるときに文庫本を読んで待っている人で、そんな彼はSNSも、LINEくらいしかやっていなくてそんな彼に惹かれた。

居酒屋では、最近読んだ本や観た映画、恋愛の話をしたりした。彼は国立の頭の良い大学に通っていて、本もよく読み学がある人なので、彼から聞く哲学や倫理の分野の話は私を夢中にさせた。

2軒目はよく行くというBarに連れて行ってもらった。Y君と話すのは飽きることがなくて、時間を有意義に使ったと言えるくらい充実したものだった。

 

そんな時、彼があの曲を知ってるかと私に聞いてきた。

「友達がすごく良いって言っていて、別れた彼女を思い出すからいつも泣いてしまうって言って、そこにいた奴らみんな共感してたんだけどさ、誰かの彼女になっても…みたいな」

私はそれを聞いてすぐにピンと来た。それは、天才バンドの『君が誰かの彼女になりくさっても』だった。私はこの曲を、Twitterでフォロワーが呟いていて知った曲で何度もYoutubeで聞いては良い曲だと、iPhoneにも入れた。まさかY君からこの曲の名前が出てくると思わなくて、嬉しかった。

「ずっとずっと君が好き 誰かの彼女になりくさっても」

「君は君の日々があり

僕には僕の日々がある

君には君の歌があり

僕には僕の歌がある」

人は、忘れられない人を思い出す時に人は何を聴くんだろう。一緒に聴いた歌、教えてもらった歌、自分が教えた歌。付き合った人数だけ、その歌があるのは何だか面白いけど、同時に切ないと感じる。

私は何人かの彼女のひとりでしかなかったのかな。好きだった人でしかなかったのかな。遠くにいる彼は私を思い出す時に何を聴いているのだろう。もしかしたらそんな歌はなかったのかもしれないけど。

 

私とY君は手を繋いでもいないし、キスもセックスもしていない。きっとこれからもそうだろう。そうでありたい。そうでなかったら、きっと全てが崩れてしまうだろう。その時はきっと私の数いる遠くに追いやった男たちのひとりになるだろうから。

 

私たちは店を出て、終電に間に合うように駅に向かって歩いた。

ああ 私はいつからどこにいても孤独を感じるようになったんだっけ

いつから他人と話していても俯瞰するようになってしまったんだっけ

他人と変わらないただの人間なのにいつから私は自分を自分だけを特別だと思うようになってしまったんだっけ

私は何年か前にプツリと切れてしまった糸を繋ぐことも出来ずにその切れた糸を持って今も彷徨っている

 

あなたは見たこともない私を私の声を透き通ったビー玉みたいだと言った

「君は自分で知らないうちに我慢することを覚えてそのうち一人だけじゃ抱えきれなくなってこうやってダメになって行くんだよ」

ダメになった私は、糸が切れてしまった私は修復が不可能になってしまったのか

ダメになり続ける日々が限界を迎えようとしては、結んで繋いで誤魔化して、それからまたほつれて

あなたに聞きたかった。私を救ってくれるのは何かと

またあなたも去って行った

私も去ってしまおうか

でも私は何から去ればいいのかもう分からなかった

 

Qui

恋人といたのにきっと理解されなくて、切なくて耐えきれなくて、涙が溢れてしまったのに先に眠ってしまった。 ひとりぼっちになって悲しくてどうしようもなくて猫を抱いても虚しくて、やりきれなくて終電に間に合ううちに部屋を出た。

 

寒さに耐えながら夜空を見上げたら星が輝いていて、また泣きそうになった。久しぶりにこんなにちゃんと夜空の星を見た気がした。

新宿行きの電車に乗ってあの場所へ行って、会ったことのないあの人に会いに行こうかと思ったけど、少しの躊躇いと泣いて落ちた化粧を見てやめた。

 

深夜のファミレスへ行ってタバコを吸いながらハイボールを飲んだ。向かいの席で談笑している主婦たちの会話を少し聞きながら、持っている大学の教科書を開いても虚しさが大きくてずっとスマホを触っていた深夜0時。私は一体誰。

lost

もう会うことがない人々を思い出す。

インターネットで知り合って一度だけ寝た人たち。インターネットで知り合ったけど、カフェオレを一杯だけ頼んで別れた同い年の男の子。彼らは私を思い出すことはきっと無いけど、私は時々思い出す。彼らと初めて会った東京の街、あの人がつけていた香水。テレビから流れる映画をよそにセックスをした新宿のホテル。酔ったフリ。ひとりぼっち。

 

ところで、2年前に死んだ祖父に会いたい。無口だった祖父が死んだ後、部屋の本棚を見ていたら日記が出てきた。クラブの練習に行ったこと、私が学校を休んだこと、全部書いてあった。言葉を直接掛けてきたりすることは無かったけれどちゃんと私たち家族を見ていた。最後にちゃんと話をした時、素っ気なくしてしまった気がする。病院に入院してからはもうまともに話していない。

それから、逝ってしまった。

 

 

人と別れるのがつらいから誰とも親しくせずに一人きりで生きていけたらどんなに良いだろうか。

失うのが怖くて仕方がない。誰も私に優しくしないで。

 

 

 

 

 

gone

彼の話をする。彼とはネット掲示板で知り合った。私が「つらい、死にたい」と投稿したら自分も同じだとチャットが送られてきた。理由は恋人と別れたからだと言っていた。ただの失恋か、と思ったのを覚えている。でも本当はそんな軽いものじゃなかった。それからチャットと通話をして後日会うことになった。

 

彼の顔を見たとき、なんて喪失感に溢れて悲しそうな人なんだろうと思った。そのまま電車で彼の家へ行った。彼とベッドに横になり、全てを吐き出したら一気に涙が溢れ出た。彼は「大丈夫、大丈夫」と私を優しく抱き締めた。それから何度か彼の家へ行った。苦しい、助けてと連絡をすれば「おいで」と言って最寄りの駅までタクシーで迎えに来てくれた。映画を観たり、話をしたり、ただひたすらセックスをしたりした。

 

セックスの最中「君は自分で自分を苦しめてるんだよ。僕のところに来れば君は悲しまずに済むのに。」と何度も彼は言って私はまた泣いた。

 

彼は彼なりに苦しい経験をしてきたらしい。小さい頃、叔父に犯されたり当時付き合っていた恋人が自殺をしたり。まだ22歳なのにもうこの世の全ての悲しみを知ってしまったかのように酷く大人びていた。そして私の全てを受け入れて愛した。

 

彼は20冊の本を破きながら読んだことがあると言った。「試してみるといいよ。」とも。初めて会った日の帰りにいらない本を10冊ほどくれた。彼のお気に入りの鈴木いづみも貰ってしまった。

 

彼はもういなくなってしまった。すぐに会える距離にはもういない。ひとりぼっちになったのだ。彼も私も。

 

 

 

chloe

7/24

深く深く考えることが少なくなって私が私じゃなくなっていく気がした

 

7/29

なんでもない夏を愛したかった

ここじゃ月も星も見えない

 

8/2

可愛い服を着てデートをしたってどうせ家に行ってセックスしてくしゃくしゃになるだけの虚無

 

8/4

何に向かって「平衡」を思えばいいのか分からない 私の周りには何もない

 

8/19

自分がきらい

Razbliuto

何かを頑張ろうと思える恋だった。

一つ上の彼とは出会い系アプリで知り合った。友人と一緒に始めたという大阪住みの彼が東京へ来ることになった数日間、毎晩無料通話をした。彼は関西人特有のユーモアのある話で私を楽しませた。彼が東京へ来る当日、私は彼を新宿へ迎えに行った。当時、まだ私は高校生だった。既に推薦で大学進学も決まり、学校の自習室へ勉強しに通っていた。

 

新宿駅南口で彼からの電話を待ち、着いたと知らされ彼を探そうと思ったが私たちはお互いの顔を知らなかった。本名も通う大学も、やったことのあるバイトも知っているのに。でも彼は私をすぐに見つけた。こんなにも曇りのない笑顔があるだろうか、と思うほど爽やかな笑顔で私に声をかけた。今思えばこのときに一目惚れをしていたのかもしれない。

 

三日間、東京を案内して彼とはとても仲良くなった。彼が深夜バスで帰る日、私はずっと泣いていた。「大学へ行ってバイトをして視野を広げて、大阪に会いに来て」と彼は私の頭を撫でながら言った。そして「行ってきます。」と初めて会った時と同じ笑顔でバスに乗った。

 

それから私は大学に進学し、バイトをしてひとりで彼に会うため新幹線で大阪へ向かった。新大阪駅で迎えてくれた彼は半年前よりも少し背が伸びていた。今度は彼に大阪や京都、奈良を案内してもらった。中学2年の京都と奈良の修学旅行に行かなかった私にとって、遅くやってきた修学旅行のようだった。彼は私の写真を撮ってくれた。好きな人に撮られる写真はモデルの一番の笑顔を引き出すと聞いたことがある。

 

私たちの『これから』について話した時、彼は「今は勉強に集中したいから付き合うことはできない。ひとつのことにしか集中できないんだ。」と私に言った。実際、彼は大阪でも偏差値の高い大学の理系の学科に通う頭の良い人だったから。でも私は『待っていてもいいかな?』と聞いた。この台詞、前も彼に言ったなぁ…と思った。あの時は、「うん」と言ったのに、今度は「待たなくていいよ」なんて言われてしまった。待たなくていいんだ。

 

それからはもう覚えていない。帰りの新幹線の隣席のカップルが仲良く言葉遊びゲームでもしていて、それをずっと聞いていた。もしかしたら、少し泣いたかもしれない。帰宅してからは食事も取る気にもならなかった。ずっと泣いていた。次の日にバイトを入れてしまった自分を憎んだが、なにも考えずにいられるので救われた。

 

彼はいつも歩いているとき、HilcrhymeやHISATOMIを口ずさんでいた。同じ曲を聴きたくて彼に会うまでに何度も聴いたどうせ終わった恋なら、この曲も私の曲にしてしまおう。だから彼を思い出したとしても何度も聴いた。彼が聴いていた曲じゃない。もう私の曲だ。これでいいんだ。

全てをやめてもいいと思えた。終わった恋。